復活祭の黙想
「あなたがたの命であるキリストが現れるとき」

ヨハネ20:1-9

川越教会担当司祭 ヨハネ 加藤 智 神父


  主キリストのご復活の日の朝早く、マグダラのマリアは、主のおからだが納められた墓を訪ねました。しかし、その墓の内に、主を見つ けることは出来ませんでした。ヨハネによる福音は、そのように伝えています。

  イエズスさまにもう一度お会いしたい。主キリストへの切ないほどのマグダラのマリアのこの一途な思い。しかし、訪ねた主の墓が空で あった時のマリアの驚きと落胆。それは、皆さんもよくお分かりになると思います。

  しかし、「その時」と、ヨハネによる福音は、続けて、マグダラのマリアとご復活の主キリストご自身との驚くべき出会いを伝えます。

  マリアが「空の墓の外に立って泣いていた」「その時」、彼女は、「マリア」と彼女の名を呼ぶ声を聞いたのです。忘れもしないその声 に、マリアは即座に、彼女の言葉で主キリストに、「ラボニ」と、お応えしました。「私の先生」と言う意味です。

  「私の先生」。この短い言葉にマリアの逸る心を感じます。ふたたび見(まみ)えることがゆるされたご復活の主キリスト。主に縋り つきたい。しかしこの時、主はマリアに、「わたしに縋りつくのはよしなさい」と仰せになりました。なぜでしょうか。

  マグダラのマリアだけでは無いと思います。実は、気付かないままに私たち一人ひとりも、この「私の」思いの中に、「私の」小さな 愛の中に、「私の」願いの中に、主キリストを求め続けて来たのではなかったでしょうか。

  しかしご復活の主は、それとは逆に私たちが、「主ご自身の」内に、「主の」深い願いの内に、「主の」大きな愛の内に、私たち自身を 見出すことを願っておられます。

  主キリストは、エルサレムに最後に入城された直後、神殿での説教で人々に、「わたしは地上から上げられるとき、すべての人を自分の もとへ引き寄せよう」(ヨハネ12:32)と、仰せになっておられました。

  このみことばで主キリストは、ご自身の十字架に続くご復活が、聖霊による主ご自身の新しいいのちの始めであるのみならず、主の十 字架によって主に結び合わされた私たち自身の復活のいのちの始めでもあることを、語り示しておられます。そのことを、復活の主キリス トの使徒パウロは次のように語っています。

  「あなたがたは、キリストと共に復活させられたのですから、上にあるものを求めなさい。そこでは、キリストが神の右の座に着いてお られます。・・・あなたがたは死んだのであって、あなたがたの命は、キリストと共に神の内に隠されているのです。あなたがたの命である キリストが現れるとき、あなたがたも、キリストと共に栄光に包まれて現れるでしょう。」(コロサイ3:1-4)

  ご復活の主キリストが、マグダラのマリアに、「わたしに縋りつくのはよしなさい」と仰せになられた時、主は、続けて次のように念 を押しておられました。「わたしは、まだ父のもとへ上っていないのだから。」(ヨハネ20:17)

  ご復活の主キリストは、決してご自分だけが「天の父のもとに上っていないのだから」と仰っておられるのではないと思います。ご復 活の主のいのちとともに、マリアの命も、まだ天の父のもとに高く上げられていないのだから、ということです。

  しかし、ご復活の主キリストが天の父のもとに高く上られる時には必ずマリアの命も主とともに、主によって引き上げられ、天に高 く上げられた主のご復活のいのちと一つとされます。ただしそれは、マリアが、ご復活の主に縋りつくことによってではありません。ご復 活のキリストが、マリアを「抱き起こし、抱き上る」ことによってです。

  実は、主がマリアと話されたユダヤの言葉では、「復活する」とは、死んでいた者、倒れていた者が、一人で立ち上がると言う単純 な意味ではありません。元来は、(倒れた者、死んでいる者を)抱き起こす」という意味の言葉です。

  主キリストは復活された。それは、単に倒れ死んでいた主キリストが生き返ったと言うのではありません。倒れ死んでいたのはマリ アの方です。そのマリアが、あるいは倒れている私たち一人ひとりが、主に抱き起こされる。それが主の「復活」です。

  私たちのために十字架につかれた主キリストは、主の十字架の下に、なお蹲(うずくま)る私たちのために復活してくださるので す。倒れている私たちを、死に打ち勝った主の力強い御腕で抱き起こしてくださるために。十字架の傷跡のある主の御腕で。

  ご復活の主キリストが、皆さんとともに。
  アーメン。



(「主日の福音の黙想」より)



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